日本における構造的な労働不足は、長期間にわたって存在している。
人口構造の変化により高齢化が進む中で、生産年齢人口（15歳から64歳まで）が減少しています。
一方で、高齢者の割合が増加しており、労働力人口が減少しているため、労働市場における需要と供給のバランスが崩れています。
このように日本では、労働不足による産業界の衰退が待ったなしの状況の中、官民が協力して、労働不足の取り組みをおこなっています。
デジタル技術と業務プロセスの見直し
デジタル技術とは、人工知能、自動化、ロボティクス、データ分析、クラウドコンピューティングなど、幅広い領域での革新的なテクノロジーを指します。
これらの技術は、業務プロセスの再設計や合理化に活用され、企業の生産性向上や競争力強化に寄与します。
これにより、今まで多人数で行っていた業務を少人数で行える体制が作れるため、労働不足の改善につながります。
ロボティクスによる業務代替の進展
ロボティクスによる業務代替により、単純な作業や繰り返しのタスクを自動化することで、生産性が向上します。
ロボティクスは、物理的な作業から知的な課題まで、多くの業務を効果的に代替する可能性を秘めています。以下に代表的な分野をいくつか紹介します。
1. 製造業界
自動車や電子機器などの製造ラインでのロボットの活用は長らく行われています。近年では、協働ロボット（コボット）が導入され、人とロボットが共同で作業を行うケースも増えています。
2. 物流業界
倉庫内の商品のピッキングや運搬など、物流業務におけるロボットの活用が進んでいます。自律移動型ロボットやドローンを用いた配送など、効率的な物流体系の構築が進行しています。
3. 農業
農作業においても、種まきや収穫などの作業がロボットによって自動化されつつあります。農業分野でのロボティクス活用により、生産性向上と作物の品質管理が進展しています。
4. 医療
手術支援ロボットやリハビリテーション用ロボットなど、医療分野でもロボティクスが活用され、より正確な処置や治療が可能となっています。
ロボティクスによって、人間を直接必要としない業務が生まれれば、その分を違う労働に振り分けることができます。
マイノリティ労働者が労働市場への参入を増加させる
日本の労働市場では、女性や高齢者、外国人労働者など、潜在的な労働力がまだ活用されていない状況があります。
女性の社会進出や高齢者の再雇用、外国人労働者の受け入れなどが進展しつつありますが、まだ改善の余地があります。
外国人労働者の総数と今後の見通し
厚生労働省の資料によると、外国人労働者数は 1,822,725 人で、前年比 95,504 人増加し、届出が義務化された平成19年以降、過去最高を更新し、対前年増加率は 5.5 ％と、前年の 0.2 ％から 5.3 ポイントの増加。
ちなみに総務省統計局によると、2021年10月から2022年9月までの1年間の日本の人口は約55万6千人減少している。
今後の課題
現在の施策から、さらに労働人口不足解消に必要な施策は次のとおりである。
労働条件とワーク・ライフ・バランスの課題
長時間労働や過度な労働条件が一部で根強く残っており、これが労働市場への参入を妨げています。
また、ワーク・ライフ・バランスの悪さが、特に若い世代の労働者にとって魅力的でない職場環境となっています。
専門技能労働者の不足
一部の専門職や技術系職種においては、適切な技能労働者が不足している状況があります。特に情報技術や医療分野などで、需要に対する適切な供給が追いついていないケースがあります。
まとめ
人口減少による構造的な労働力の不足と、ライフワークの変化によってビジネスの選択が偏る要因等が組み合わさって、日本の労働市場における構造的な労働不足が引き起こされています。
政府や企業は、多様な対策を検討しており、女性や高齢者の活用促進、外国人労働者の受け入れ拡大、労働環境改善、技能教育の強化などがその一環です。
ただし、これらの課題は簡単に解決することが難しく、長期的な取り組みが必要とされています。
